熊本県天草市東町48に位置していた「天草蕎麦処 苓州屋」は、天草の豊かな自然が育んだ食材にこだわり、地元産の蕎麦や海鮮を用いた独自の蕎麦料理を提供し、多くの人々に愛された蕎麦処でした。惜しまれながらも2024年9月29日をもって閉店しました。かつてはミシュランガイドにも掲載されるほどの評価を得ていたことでも知られています。
この蕎麦処は、天草市民センターから徒歩約3分、天草中央総合病院バス停からは徒歩約1分という、比較的アクセスしやすい場所にありました。また、本渡バスセンターからは徒歩約10分、車を利用する場合には天草空港から約15分、本渡港からは約3分という利便性の良さも特徴でした。専用の無料駐車場も約12台分完備されていたため、車での訪問者も安心して利用することができました。
「天草蕎麦処 苓州屋」の大きな特徴は、そのこだわり抜かれた蕎麦にありました。大将の地元である宮地岳町で栽培された蕎麦を使用し、店舗の裏にある石臼で毎日自家製粉を行っていました。挽きたて、打ちたて、茹でたての「三たて」を徹底することで、香りと歯触りの良い絶品の蕎麦を提供していました。さらに、天草の温暖な気候を活かし、蕎麦の年間3回収穫を目指すことで「獲れたて」を加えた「四たて」の提供にも挑戦していました。蕎麦つゆには、生産量日本一を誇る牛深の雑節(本枯れの鰹やサバなど)から取った出汁が使われ、その上品な味わいが蕎麦の風味を一層引き立てていました。蕎麦だけでなく、醤油や塩、野菜に至るまで地元の素材を積極的に取り入れ、地産地消を強く意識した店作りが行われていました。
メニューには、冷たい蕎麦、温かい蕎麦、つけ蕎麦のほか、丼物や御膳、一品料理、デザートなど、多岐にわたる品々が揃っていました。特に人気を集めていたのが、天草名産のウニを贅沢に使った季節限定のウニ蕎麦です。3月から5月頃にはムラサキウニ、7月から9月頃には赤ウニが使用され、その時期に最も旬を迎えるウニをたっぷりと蕎麦に乗せた「天草ウニ御膳」は、ウニ蕎麦、ウニ丼、ウニ握り、ウニコロッケ、そば粥といった豪華な内容で提供され、多くの食通を魅了していました。価格は時価でしたが、その価値を十分に感じられる逸品として知られていました。
ランチタイムには、手軽に楽しめるセットメニューも充実していました。「ミニ天ランチ」は、苓州ざるそばまたはかけそばに季節のミニ天ぷら、そば粥、小鉢が付いて1,100円。「天とろランチ」は、石臼挽きの蕎麦に、とろろご飯、そば粥、天ぷら、小鉢がセットで1,120円というお得な価格で提供されていました。その他、「はまゆうランチ」や「つばきランチ」といったセットもあり、それぞれに蕎麦といなり寿司、たまご巻き寿司、そばがきぜんざい、そばアイスなどが組み合わされていました。単品の「ミニ天丼」は600円、それに小盛蕎麦が付いたセットは1,000円でした。夜の営業では、天草大王や鴨肉を使用した鍋料理なども提供され、宴会利用も可能でした。蕎麦を揚げる際に使われる油を再利用した「そばぼうろ」や、蕎麦茶が提供されるサービスも、来店客への細やかな配慮として好評でした。
店舗は築50年ほどの古民家を改装した、趣のある空間が広がっていました。店内には畳の上に椅子とテーブルが配置されており、足腰に不安のある高齢者でも安心して利用できる工夫がされていました。窓際の席からは庭の景色を眺めることができ、落ち着いた雰囲気の中で食事を楽しむことができました。総席数は約30席で、個室は設けられていませんでしたが、20人以下の貸切利用にも対応していました。
支払い方法も幅広く、主要なクレジットカード(VISA、Master、Amex、Diners、JCB、Discover、銀聯)が利用可能でした。また、交通系電子マネー(Suica、PASMO、ICOCAなど)やiD、QUICPay、ApplePayといった電子マネー、さらにはPayPay、楽天ペイ、d払い、au PAY、メルペイ、支付宝(Alipay)といったQRコード決済にも対応しており、利便性の高い決済環境が整っていました。テイクアウトサービスも提供されており、自宅でもその味を楽しむことができました。新型コロナウイルス感染症対策として、入店時の検温や消毒液の設置、テーブルごとの仕切り、席ごとの一定間隔確保、他グループとの相席禁止、料理の大皿提供なし、非接触型決済など、衛生管理にも力を入れていました。店内は全席禁煙でした。
「天草蕎麦処 苓州屋」は、天草の食材と蕎麦への深いこだわりを持ち、地元住民だけでなく観光客からも愛される存在でしたが、2024年9月29日をもってその歴史に幕を閉じました。