東京都中央区銀座8-7-19すずりゅうビル2Fに位置していた「割烹 室井」は、その卓越した日本料理で多くの食通に愛され、長年にわたり銀座の美食シーンを彩る存在でした。しかし、現在この場所での営業は終了しており、その名は新たな地で引き継がれています。ここでは、かつてこの銀座の地で提供されていた独自の食体験についてご紹介します。
JR新橋駅から徒歩約5分、東京メトロ銀座線銀座駅からも徒歩約7分という便利な立地にありながら、銀座の賑わいから一歩奥まった場所に静かに佇んでいました。店内は落ち着いた雰囲気に包まれ、特別な日や接待にも安心して利用できる上質な空間が広がっていました。女将をはじめとするスタッフによるきめ細やかな接客は、多くの客から高く評価され、心地よい時間を過ごすことができました。
「割烹 室井」の際立った特徴は、店主が自ら全国の野山に出向き収穫する天然きのこや山菜をふんだんに使った料理の数々でした。栃木県の那須高原や福島県の会津から届けられる松茸、あんず茸、たまご茸、あかもみ茸など、数十種類に及ぶ希少なきのこを年間を通じて堪能することができ、きのこ料理の第一人者としての名声を確立していました。店主は140種類以上の天然きのこを見分ける知識を持ち、それぞれの特性を最大限に引き出す創意工夫を凝らした調理法で提供していました。日本料理の基本を守りながらも、既存の枠にとらわれない柔軟な発想で、洋食や中華のエッセンスを取り入れた斬新な創作料理も生み出され、訪れる客に「知っているけれど食べたことのない味」という驚きと感動を与えていました。
提供される料理は、その季節の旬の食材を贅沢に盛り込んだおまかせコースが中心でした。一品一品には、素材が持つ本来の香りや温度を最も良い状態で引き出すという店主の深いこだわりが息づいていました。特に、きのこを主役にしたお椀や、上質な松坂牛のサーロインを惜しみなく使用した料理は、多くの客を魅了しました。食事の締めには、梅おにぎりや鮭おにぎりなど数種類のおにぎりの他、小カレーや一口メンチカツを乗せた丼といったユニークな選択肢も用意されており、これらは客のリクエストに応える形で種類が増えていったといわれています。このような家庭的な温かさも感じさせる一面も、この店の魅力の一つでした。料金は、お酒を含めると一人あたり30,000円を超えることもあり、銀座の老舗割烹ならではの価格帯でしたが、その質とサービスを考慮すると十分に納得のいくものでした。一般的な平均予算は、通常の利用で25,000円程度、宴会利用で20,000円程度とされており、これに別途10%のサービス料が加算されていました。
座席は、接待などの大切な席にも対応できる個室や、ゆったりとくつろげる座敷席が完備されており、様々な利用シーンに対応できました。落ち着いた雰囲気の中で時間を気にせず食事を楽しむことができたため、ビジネスでの会食やプライベートな集まりにも最適な場所でした。さらに、客一人ひとりの健康や食の好みに配慮し、ヘルシーメニューやベジタリアンメニューに関する相談にも柔軟に応じていました。英語を話せるスタッフも常駐しており、海外からの客も安心して日本の繊細な味と文化を体験できる環境が整えられていました。