東京都青梅市御岳本町に佇む「手打ち蕎麦 玉川屋」は、大正4年(1915年)創業という百年を超える歴史を持つ老舗の蕎麦店です。明治時代の民家を活かした茅葺き屋根の建物が特徴で、その趣ある外観は周囲の豊かな自然と調和し、訪れる人々に懐かしい日本の風景を感じさせます。店内も昔ながらの温かみのある空間が広がっており、見事な梁や柱など、古い民家の造りを見ることができます。畳敷きの座席で、ゆったりと落ち着いた時間を過ごしながら手打ち蕎麦を味わえるのが魅力です。
アクセスはJR青梅線 御嶽駅から徒歩約1分から3分と非常に近く、ハイキングや観光でこのエリアを訪れる際の立ち寄りにも便利です。御岳渓谷の近くに位置しており、清流を眺めながら食事を楽しめる窓辺の席もあります。自然に囲まれた静かな環境で、日常を離れてリラックスできる雰囲気です。
玉川屋のこだわりは、毎朝手打ちされる蕎麦にあります。蕎麦粉は北海道旭川産を中心に厳選された国内産を100%使用し、蕎麦を打つ水や出汁にも御岳の山の水を使用しています。出汁は天然の昆布と鹿児島県産の鰹節から丁寧に取られており、蕎麦本来の風味を引き立てる深みのある味わいです。一日二度、三度と蕎麦を打つことで、常に打ちたての新鮮な蕎麦を提供することに心を配っています。蕎麦は、ほどよいコシのある田舎蕎麦タイプです。
メニューには冷たい蕎麦と温かい蕎麦が豊富に揃います。冷たい蕎麦では、蕎麦の香りと喉越しをシンプルに味わえる「もりそば」や「ざるそば」、粘りの強いとろろが蕎麦によく絡む「とろろそば」などが人気です。温かい蕎麦では、脂の乗った鴨肉と風味豊かなつゆが特徴の「鴨汁蕎麦」や「鴨南ばん」、山菜の優しい味わいが楽しめる「山菜蕎麦」などがあります。また、揚げたての天ぷらが付く「天ざる蕎麦」や「天ぷらそば」も人気の一品です。
蕎麦以外のメニューも充実しており、奥多摩の自然が育んだ川魚料理や山の幸を味わうことができます。特に「やまめの塩焼」や「川ますの塩焼」は通年提供されており、生け簀から取り出したばかりの新鮮な魚を炭火でじっくりと焼き上げるため、香ばしくふっくらとした仕上がりです。夏には期間限定で「あゆの塩焼」も登場します。その他、「岩茸の酢の物」や「ぜんまい」といった山菜料理、味噌田楽やもつ煮、おでんなども提供しています。丼物や定食もあり、様々なニーズに応えています。
ドリンクメニューにはビールや日本酒(地元の澤乃井)、蕎麦焼酎などが揃いますが、中でも「そばビール」はここでしか味わえない珍しい一杯としておすすめです。また、地元東京のブランド豚「TOKYO X」を使用した「肉汁そば」は、かつて地元の食の祭典でグランプリを獲得したこともある評判のメニューです。
座席数は通常約60席あり、団体での利用も可能です。個室も用意されており、7名以上のグループで利用できます。落ち着いた雰囲気の中で、家族や友人との食事、あるいは一人でゆっくりと蕎麦を堪能するのに適しています。全席禁煙となっており、快適に食事を楽しめます。お子様連れも歓迎しており、幅広い層に利用されています。
かつては太宰治や井伏鱒二、田中澄江といった多くの文豪たちもこの玉川屋を訪れ、この場所で蕎麦を味わい、語り合ったと言われています。店の広間には当時の文豪たちが集った面影が残り、歴史の一端を感じることができます。また、お土産として手打ちの生蕎麦を持ち帰ることも可能です。御岳の美しい自然の中で、歴史ある建物とこだわりの手打ち蕎麦、そして地の食材を使った料理を心ゆくまで楽しめる、魅力的な蕎麦屋です。週末や行楽シーズンは多くの人で賑わうため、時間に余裕を持って訪れるのが良いでしょう。