熊本市中央区下通1-6-4 武蔵ビル1Fに位置していた「焼鳥 トリドリ 本店」は、2024年10月31日をもって営業を終了いたしました。多くの美食家に惜しまれつつ、その歴史に幕を下ろしたこの店舗は、熊本の中心地で特別な焼き鳥体験を提供していました。
通町筋駅から徒歩およそ5分、また花畑町駅からもアクセスしやすい場所にあり、下通アーケードのドン・キホーテ近くという利便性の高い立地も特徴の一つでした。かつて「ひょごトリハナレ」があった場所に、内装はその雰囲気を引き継ぎつつオープンし、来店客を迎え入れていました。
店内は洗練された落ち着いた空間が広がり、特にカウンター席がメインの配置で、客席数は14席ほどでした。おしゃれな雰囲気を演出し、居心地の良い時間を過ごせるよう工夫が凝らされていました。残念ながら個室の用意はありませんでしたが、オープンな空間で職人の技を間近に見ながら、食事と会話を楽しむことができました。ベビーカーでの入店も可能であったため、小さなお子様連れの家族にも配慮がなされており、幅広い客層に利用されていました。
「焼鳥 トリドリ 本店」のコンセプトは、厳選された焼き鳥とナチュラルワインの組み合わせにありました。熊本の豊かな旬の食材を積極的に取り入れ、焼き鳥の美味しさを最大限に引き出すことに注力していました。料理に使用される器にもこだわりが見られ、有田焼や九谷焼といった日本の伝統工芸品が用いられることもあり、視覚的な美しさも食体験の一部として提供されていました。料理は大皿ではなく、一人分ずつ小皿で提供されるスタイルが採られていたことも特徴的でした。
メニューは、お客様が来店時に選択するコースが中心でした。特に人気の高かった「楓コース」は、バラエティ豊かな焼き鳥8種に、季節感あふれる一品料理1種、そして〆にはそぼろ丼または自家製冷麺から選べる食事が含まれており、その質の高さと満足度で好評を博していました。提供される串の種類も豊富で、ジューシーな「せせり」や、生姜が添えられた風味豊かな「ハツ」、コリコリとした食感が楽しめる「砂肝」、そしてトリュフソースで仕上げられた香ばしい「つくね」などが人気を集めていました。「もも肉」はタレで提供されるなど、それぞれの部位に合わせた調理法で、素材の味を最大限に引き出していました。一品料理としては「棒棒鶏」や「カマンベールチーズ」なども提供されていました。
ドリンクメニューも充実しており、料理とのペアリングを楽しめるナチュラルワインが豊富に揃っていました。特に白ワインの種類が多く、時には赤ワインは限られることもあったようですが、スタッフに好みを伝えれば最適な一本を提案してもらえるサービスがありました。その他にも、日本酒、焼酎、カクテルなど、幅広いラインナップが用意され、それぞれのこだわりが感じられる品揃えでした。
「焼鳥 トリドリ 本店」は、その質の高い料理と洗練された空間で、熊本の焼き鳥シーンにおいて確かな存在感を示していました。閉店は惜しまれるものの、その名を熊本の食の歴史に刻んだ名店として記憶されています。