福岡市南区皿山という閑静な住宅街の中にひっそりと佇む隠れ家のような存在として知られていた「良か味処 わがまま 皿山店」。西鉄バス「皿山三丁目」バス停からはごく近い場所に位置しており、主要な駅である大橋駅からは約2.5kmほどの距離がありましたが、その立地から、地元住民を中心に、知る人ぞ知る名店として愛されていました。
この店は、2022年1月から2023年2月までこの皿山の地で営業していました。店を切り盛りしていたのは、かつて沖縄で自身の料理店を営んでいた経験を持つ女将で、その確かな腕とセンスが光る家庭的な和食が、多くの食通たちの舌を唸らせていました。店全体に漂うアットホームな雰囲気と、心温まる手料理の数々は、訪れる人々に「我が家」のような安らぎとくつろぎを提供することをコンセプトとしていました。
「良か味処 わがまま 皿山店」の看板メニューは、博多名物の「もつ鍋」でした。提供されるもつ鍋は、その日の仕入れによって厳選された鮮度抜群のもつが惜しみなく使われ、それらの素材の旨味を最大限に引き出す、繊細で奥深い出汁が特徴でした。一口食べれば、もつのプリプリとした食感と、じんわりと広がる出汁の旨みが口いっぱいに広がり、心ゆくまで博多の味を堪能できる逸品として親しまれていました。
もつ鍋以外にも、女将の創意工夫が凝らされた一品料理が豊富に揃っていました。ある時のコース料理では、クリアな出汁で丁寧に仕上げられた茄子の揚げびたしや、新鮮なイカや甘エビの甘みが際立つお造り、もっちりとしたフグの唐揚げ、ふっくらとした肉団子、そして彩り豊かなサラダなどが提供され、もつ鍋に至るまでの期待感を高める工夫がされていました。特に、お酒のアテとしても人気の高かった「とん平焼き」や、女将が「得意な一品」と語っていた〆の「ちゃんぽん」は、その完成度の高さからリピーターも多かったとされています。これらの料理は、一皿一皿に真心を込めて作られており、約4,000円程度のコースでも十分な満足感が得られる内容でした。
座席に関する具体的な詳細情報は確認できませんでしたが、小料理屋という形態や、隠れ家のような立地と相まって、温かく居心地の良い空間が提供されていたと推察されます。落ち着いた雰囲気の中で、食事と会話をゆっくりと楽しむことができたでしょう。特別なサービスについては、一般的な飲食店の提供サービスを除き、特筆すべき情報は確認できませんでした。しかし、女将が「人に接し、人を喜ばせ、笑わせることが大好き」という人物であったことから、料理だけでなく、店主との会話を通じて心温まる時間を提供していたことが伺えます。
「良か味処 わがまま 皿山店」を運営していた店主は、2023年2月に皿山での営業を終了し、2023年6月には「くつろぎ処わがまま」と屋号を改め、福岡市の歓楽街である中洲に移転オープンしています。中洲の新店舗では、皿山店で培われた人気の手料理の数々が引き続き提供されており、さらに団体客にも対応可能な空間が用意されるなど、新たな形で多くの人々を迎え入れています。皿山の地で愛された「良か味処 わがまま」の味と心は、形を変えながらも、現在も中洲で息づいています。