かつて福岡県久留米市東町、活気あふれる久留米一番街の一角に、「焼肉酒場にくまる 久留米一番街店」は店を構えていました。西鉄久留米駅から徒歩わずか5分という利便性の高い場所に位置し、多くの人々にとって気軽に立ち寄れる焼肉店として親しまれていました。昼の時間帯には「牛タンと釜炊きご飯 にくまる」として営業することもあった、多彩な顔を持つ店舗でした。
この店の大きな特徴は、厳選されたA4〜A5ランクの九州産黒毛和牛を専門に提供していた点にありました。上質な肉質が織りなす口の中でとろけるような食感は、訪れる人々を魅了しました。特に注目されたのは、肉を一切れから注文できるというユニークなスタイルです。これにより、様々なお肉を少量ずつ楽しみたい方や、一人で気軽に焼肉を味わいたい方、あるいは二軒目での利用といった多様なニーズに応え、無駄なくお好みの部位を満喫できる点が好評を博していました。
店内は、全30席がカウンター席で構成されており、個室は設けられていませんでした。しかし、このカウンター席の配置が、一人一台の炭火焼き台で、周囲の目を気にすることなく、自分だけのペースでじっくりと焼肉に集中できる特別な空間を演出していました。落ち着いた大人の雰囲気とシックな内装は、デートや少人数の会食にも適しており、アットホームで心温まる接客も相まって、居心地の良さを提供していました。
提供されていたメニューは多岐にわたり、本格的な炭火焼肉の魅力を存分に引き出していました。中でも、牛一頭からわずか150グラムしか取れないとされる希少部位「大トロタン」は、その名の通りとろけるような舌触りで店の名物として親しまれました。また、「秒殺ロース」は、さっと炙るだけで絶妙な焼き加減になり、瞬く間に食べ終えてしまうほどのおいしさから、多くのリピーターを呼ぶ一品でした。これら名物料理を一度に楽しめる「にくまるセット」も人気で、大トロタンや秒殺ロースに加え、四種の焼肉盛り合わせ、肉寿司二種、テールスープが含まれる贅沢な内容でした。
さらに、焼肉の枠を超えた独創的なメニューも展開されており、中でも「極楽寿司」は特筆すべき一品でした。九州産黒毛和牛の握りに、高級食材であるウニとイクラを贅沢に添えたこの肉寿司は、口に入れた瞬間に広がる旨味ととろける食感で、まさに「極楽」と称されるにふさわしい逸品として高い人気を集めていました。希少な「生レバーアヒージョ」や、一人焼肉のために考案された「一人様セット」など、お客様の様々な要望に応える工夫が凝らされていました。食べ放題コースも設定されており、100分制で、生ビールを含む30種類以上の豊富なドリンクと共に、心ゆくまで焼肉を堪能できるプランが提供されていました。女子会に特化したコースも用意されており、多様なシーンでの利用が可能でした。
焼肉酒場にくまる 久留米一番街店は、その上質な肉とユニークな提供スタイル、そして居心地の良い空間で、久留米の焼肉シーンにおいて確かな存在感を示していましたが、惜しまれつつも2024年10月26日をもって閉店しました。しかし、その記憶と味わいは、訪れた人々の心に深く刻まれています。