東京都立川市上砂町1丁目3−6−18に位置していた「MOON HOUSE(ムーンハウス)」は、2024年10月17日をもって惜しまれつつ閉店しました。かつては、まるで異国に足を踏み入れたかのような独特の雰囲気で、多くの人々に愛されたアメリカンダイナーでした。
この店は、1950年代から60年代にかけて在日米軍関係者のために建てられた希少な「米軍ハウス」をリノベーションしたもので、その歴史を感じさせる建物自体が大きな魅力でした。2018年4月のオープン以来、オーナー自らが手がけた内装は、アンティーク家具やサインボード、様々なコレクション品がセンス良く配され、まるでアメリカ南部の片田舎にあるような温かく居心地の良いリビング空間を演出していました。店内には常にブルース音楽が流れ、夜には裏庭のデッキから見える美しい月が店名の由来となったとされており、その名の通り、日本の日常から離れた非日常的な時間が流れる場所でした。
提供されていた料理は、本格的なアメリカ南部料理とイタリアンが中心でした。過去のメニューには、ポルチーニ茸がふんだんに使われた濃厚なボロネーゼ(1430円)や、タラと海老のココナッツカレー(1590円)などが人気を集めていました。週末や祝日のランチタイムには、ミートボールスパゲッティにフライドポテト、特製ドレッシングのサラダ、マッシュポテトを添えた一日限定5食のアメリカンパスタプレート(2740円)も提供されており、アメリカのソウルフードを堪能できました。また、骨付き肉が柔らかく、甘酸っぱいソースが特徴のバーベキューリブ(1580円)や、アサリの旨味が凝縮されたボンゴレビアンコ(1180円)も好評でした。その他、ステーキ用のブラックアンガス肉を粗挽きにして和牛の脂を加えたジューシーなハンバーグ(230gで2590円)、人気の赤海老とマッシュルームのアヒージョ(1390円)、自家製生地とソースにオイルサーディンを組み合わせたチーズ不使用のピザ・シチリアーナ(1590円)など、マスターこだわりの逸品が揃っていました。ドリンクメニューも充実しており、日本酒やクラフトビールも楽しむことができました。テイクアウトも可能でした。
座席は、明るい日差しが差し込むテラス席のほか、プライベートな時間を過ごせる個室も完備されていました。店内にはギターや三線、チェロなどがディスプレイされ、まるで音楽スタジオのような一角もあり、時折ライブイベントが開催されることもありました。本棚には人気漫画も並べられ、訪れる人々が思い思いにリラックスできる空間が提供されていました。テラス席や店前のベンチでは喫煙が可能で、店内は全席禁煙と分煙されていました。
特別なサービスとして、ブルースライブが不定期で開催され、本格的な音楽と共に食事やお酒を楽しむことができました。また、誕生日やクリスマス、忘年会など、貸し切りでの各種パーティーにも対応しており、予算に応じた料理のアレンジや飲み放題コースの提供も可能でした。定休日である月曜日や水曜日でも貸し切り利用ができたため、様々なシーンで活用されていました。天気の良い日にはテラス席を貸し切ってバーベキューを楽しむこともでき、特別な思い出作りにも最適な場所でした。さらに、平日昼間には「上砂倶楽部」というフリースペースとして開放されていた時期もあり、地域の人々の交流の場としても機能していました。お店のマスコットとして、トイレの横のゲージにいる美しい毛並みの猫「モン吉」も、訪れる人々を癒す存在でした。
交通アクセスとしては、最寄りの武蔵砂川駅からは徒歩で約21分とやや距離がありましたが、東中神駅や中神駅からも徒歩圏内でした。立川駅からはタクシーで約10分程度の場所に位置しており、店舗利用者向けの駐車場が2台分用意されていたため、車でのアクセスも便利でした。また、立川バスの「大山小学校」停留所が最寄りでした。立川の歴史が色濃く残るアメリカンヴィレッジの入口に佇み、古き良きアメリカの空気感を味わえる、知る人ぞ知る隠れ家的な存在でした。