東京都大田区萩中に位置していた「とんかつ ふる味」は、京急空港線糀谷駅から徒歩3分から4分ほどの、糀谷商店街沿いに店を構えていました。京急空港線大鳥居駅からも徒歩14分、京急本線京急蒲田駅からも徒歩15分程度の距離にありました。このお店は、残念ながら2023年7月2日をもって閉店いたしました。マンション建設に伴う閉店であったとされています。
かつて営業していたこのお店は、ミシュランガイドのビブグルマンに2020年と2021年に連続して掲載されるほどの実力店として知られていました。その大きな特徴の一つは、使用する豚肉へのこだわりでした。SPF豚(Specific Pathogen Free豚)、具体的にはSPF無菌つくば美豚や国内産最高級SPFポークを使用しており、健康で清潔な豚肉である点が重視されていました。これにより、肉質はなめらかで非常に柔らかく、脂にも甘みがあって美味しいと評判でした。また、オレイン酸を豊富に含んだ豚肉であったとも言われています。揚げ方にもこだわりがあり、国内産のラードを常に新鮮な状態で使用することで、毎日食べても胃もたれしにくいとされていました。衣は薄く、サクサクとした食感であったという感想も見られます。
メニューは主に定食形式で提供されており、フィレかつ定食、ロースかつ定食、そしてフィレとロースの両方を味わえるフィレロース定食などがありました。価格帯は、ロースかつ定食が1500円程度(当時の通常価格)で、フィレロース定食は2000円程度(当時の価格)でした。過去には、9の付く日が「肉の日」として定食が300円引きになるサービスや、閉店前のセールとして同様の割引が行われていた時期もありました。定食にはご飯、味噌汁、キャベツが添えられていました。味噌汁は豚汁の他に、日替わりで赤だし(なめこ汁やしじみ汁)も提供されるなど、細部にもこだわりが見られました。
とんかつを味わうための調味料にも特徴がありました。定番のとんかつソースやからしに加え、複数の種類の塩が用意されていました。ヒマラヤ岩塩、アンデス紅塩、粟国の塩、モンゴルの岩塩など、各地特産の塩が用意されており、ソースだけでなく塩で肉本来の甘みや旨みを味わう食べ方が推奨されていました。レモン塩や醤油も用意されており、好みに合わせて様々な味わい方ができました。
店内はコンパクトな空間で、座席はカウンター席のみが10席配置されていました。コの字型のカウンターで、落ち着いた雰囲気の中で食事ができたようです。おひとりさまでも気軽に利用しやすい雰囲気でした。個室はありませんでした。注文は券売機で行うスタイルで、衛生的であるという声もありました。
サービス面では、ご飯、味噌汁、キャベツがおかわり自由であった時期がありましたが、後にご飯と味噌汁のおかわりは有料となり、キャベツのみ1回おかわり無料という形に変更されたようです。卓上にはキャベツのおかわりボタンが設置されていたという情報も見られました。また、おしぼりとグラスを男女別に提供するなど、細やかな配慮も行われていました。テイクアウトも可能でした。
高品質なSPF豚を使用し、揚げ方や塩にもこだわったそのとんかつは、ミシュランガイドのビブグルマンに連続して掲載されるなど、国内外から高く評価されていました。惜しまれつつ閉店しましたが、多くの人々の記憶に残る名店であったと言えるでしょう。