東京都渋谷区神山町に位置していた「ITEMAE(イテマエ)」は、かつて多くの食通や地元住民に愛された和食店でした。渋谷駅から徒歩約8分から10分程度、また京王井の頭線神泉駅や東京メトロ千代田線代々木公園駅、さらには代々木八幡駅からも徒歩圏内という、都会の喧騒から少し離れた落ち着いた奥渋谷エリアにひっそりと佇む隠れ家のような存在でした。店舗は遊歩道沿いにあり、おしゃれなカフェを思わせるオープンな外観とクリーンで洗練された内装が特徴で、和食店でありながらも肩肘張らずにリラックスして過ごせる雰囲気でした。落ち着いた空間は、デートや友人との食事はもちろん、接待やお祝いといった特別なシーンにも利用しやすいと評判でした。中には著名人がお忍びで訪れることもあったようです。
提供されていたのは、有名日本料理店での経験を持つ料理人が手がける本格的な和食と、旬の食材をふんだんに取り入れた創作料理の数々でした。岩手県大船渡漁港から直送される鮮度抜群の魚介を使ったお造りはもちろんのこと、素材の味を最大限に引き出した野菜料理や肉料理にもこだわりが見られました。メニューには、エイヒレやクリームチーズといぶりがっこ、出来立て厚揚げといった居酒屋定番の品から、厚岸産の新鮮な生牡蠣、和牛ももに生雲丹を乗せた逸品など、幅広い種類の料理が並んでいました。中でもITEMAEの看板メニューとして多くの人に支持されていたのが、注文を受けてから一つずつ丁寧に炊き上げる熱々の土鍋ご飯です。贅沢に生雲丹をたっぷりと乗せた「雲丹の土鍋ご飯」(2800円)や、いくらと鮭の親子コンビが食欲をそそる「鮭とイクラの土鍋ご飯」(2300円)は、一度食べたら忘れられない逸品として知られていました。夏季限定で提供されていた「とうもろこしとベーコンの土釜ご飯」(1500円)も人気で、季節ごとの味覚を楽しめました。土鍋ご飯は2~3名で取り分けられるサイズで、サービスで赤出汁が3つまで付いてくるのも嬉しいポイントでした。ITEMAE名物とされていた「極・海老しゃぶ」も多くの利用客に親しまれていました。
ランチタイムには、日替わり定食(850円)や刺身・焼き魚定食、せいろ蒸し定食などが1000円前後という手頃な価格で提供されており、近隣で働く人々やこのエリアを訪れる人々の憩いの場となっていました。ランチ定食はご飯の大盛りやお代わりが自由で、ボリューム満点でした。ディナータイムは、アラカルトメニューに加え、岩手県大船渡産の鮮魚を使ったコース料理や、名物の海老しゃぶを堪能できるコースなど、予算やシーンに合わせて選べる多様なコースが用意されていました。コース料金は料理のみで6,500円から、最大3時間飲み放題付きのコースは9,500円まで幅がありました。飲み放題付きのプランも用意されており、2時間、2.5時間、3時間以上と時間を選べ、飲み放題の価格帯は3000円台から5000円以上まで多様でした。ドリンクメニューも豊富で、日本酒、焼酎、ワイン、カクテルなど、料理との相性を考えられたラインナップが揃っていました。
店内には、料理人の手捌きを間近で見られるカウンター席(6席)、ゆったりと食事を楽しめるテーブル席(18席)がありました。総席数は45席でした。プライベートな空間を求める場合には、2名から最大8名まで利用可能な個室(2部屋)が完備されていました。個室は23時まで利用できましたが、特別なサービスとして深夜遅くまで利用できるカラオケ付きの個室も用意されており、食事の後にカラオケを楽しむといった利用方法も可能でした。貸し切りにも対応しており、20名以下の少人数から20名から50名程度の規模まで、様々な宴会やパーティーにも利用されていました。オープンテラス席もありました。その他にも、店内では無料Wi-Fiが利用できるなど、利用客への配慮が行き届いていました。サプライズやお祝いの相談も可能でした。かつてはUber Eatsでのデリバリーサービスも実施しており、自宅で手軽にITEMAEの味を楽しむこともできました。
多くの魅力的な要素を備え、様々なシーンで利用できたITEMAEでしたが、残念ながら2024年4月19日をもって閉店いたしました。奥渋谷エリアで本格的な和食と創作料理、そして心地よい空間を提供していたITEMAEは、多くの人々の記憶に残る店であったと言えるでしょう。