東武スカイツリーラインおよび東武大師線の西新井駅西口から歩いてすぐ、1分から2分ほどの距離に位置していた「喫茶シルビア西新井店」は、多くの人々に親しまれた純喫茶でした。1978年に創業し、長年にわたり西新井の地で営業を続けていましたが、建物の老朽化に伴い、2025年1月12日をもって45年の歴史に幕を下ろしました。
かつてビルの2階で営業していた店内は、足立区内でも有数の大箱喫茶として知られ、136席あるいは170席ともいわれる広々とした空間が広がっていました。一歩足を踏み入れると、そこはまさに昭和の時代にタイムスリップしたかのようなレトロでゴージャスな雰囲気。入口付近やレジカウンターの後ろに配された色鮮やかなステンドグラス、店内に吊るされたエレガントなシャンデリア、そしてベロア素材にダマスク柄があしらわれたクラシカルなソファ席は、シルビア西新井店の象徴ともいえる内装でした。大理石を使ったテーブルや、席と席の間を仕切る装飾が施されたパーテーションなど、細部にまでこだわりが感じられる空間は、ゆったりと落ち着いた時間を過ごすのに最適でした。
この特徴的な内装は、数多くの映画やドラマ、CMのロケ地としても頻繁に利用され、作品のファンが「聖地巡礼」として訪れることも少なくありませんでした。「相棒」や「ミステリと言う勿れ」、「下町ロケット」など、多くの人気作品に登場し、映像を通してその魅力を知った人も多いようです。店内には昔懐かしい漫画から比較的あたらしいものまで揃う漫画コーナーがあり、無料Wi-Fiも完備されていたため、ビジネスでの利用や、一人で読書や作業に没頭するのにも適した環境でした。
メニューは一般的な喫茶店の枠を超え、豊富なラインナップを誇っていました。喫茶店の定番であるコーヒーや紅茶はもちろん、食事メニューが非常に充実しており、「喫茶&レストラン」と称されるほどでした。ナポリタンやハンバーグといった洋食の王道から、生姜焼き定食やカツ丼といった和食、さらにはオリジナルのお弁当メニューまで揃い、時間帯を問わず様々なニーズに応えていました。特に、「バーグナポリ」や「シルビア弁当」などは多くの利用者に愛されていたようです。モーニングサービスも提供されており、一日の始まりをこのレトロな空間で過ごす常連客も多くいました。価格帯は概ね1,000円台で、その雰囲気やボリュームからコストパフォーマンスが良いと感じる利用者も少なくありませんでした。
座席は全席がソファ席で、隣席との間隔にも比較的ゆとりがあり、プライベート感を保ちながら過ごすことができました。個室は基本的にありませんでしたが、広さを活かした席の配置がなされていました。店内は分煙となっており、喫煙ブースが設けられていました。テイクアウトサービスも実施しており、自宅やオフィスでシルビアの味を楽しむことも可能でした。また、お子様連れでも利用しやすい雰囲気があり、家族での来店にも対応していました。
残念ながら閉店してしまいましたが、喫茶シルビア西新井店は、その唯一無二の空間と豊富なメニュー、そして長年にわたる歴史で、多くの人々の記憶に残る特別な場所でした。地元の人々の憩いの場としてだけでなく、メディアにも度々登場する文化的スポットとして、西新井の街に彩りを添えていた存在です。