日本橋室町に佇む「蛇の市本店」は、明治22年(1889年)創業という130年以上の歴史を持つ老舗の江戸前寿司店です。日本橋北詰の魚河岸で屋台として始まったのがその原点にあり、作家の志賀直哉が贔屓にし、初代店主を親しみを込めて呼んだ愛称が屋号の由来になったとされています。 令和2年(2020年)に新装開店した店内は、老舗ながらも清潔感があり、落ち着いた空間が広がります。特に、赤と黒の塗り分けが印象的なカウンター席は、職人の鮮やかな手仕事を目の前で楽しめる特等席です。
蛇の市本店の江戸前寿司の大きな特徴は、伝統的な赤酢と塩のみを使用し、砂糖を一切加えないこだわりのシャリです。 このキリっとした後味のシャリが、厳選された新鮮なネタの旨みを最大限に引き出します。また、創業当時から100年以上継ぎ足されてきた秘伝の煮詰めも名物の一つであり、特にふっくらと煮上げられた穴子との相性は格別です。
お昼時には、手軽に楽しめるばらちらしや握りのセットが人気です。彩り豊かな「特上ばらちらし」は、ウニやイクラ、トロなど12〜13種類の旬の魚介がふんだんに盛り込まれており、目でも舌でも満足できる逸品として多くの常連客や近隣のビジネスパーソンに愛されています。味噌汁、サラダ、デザートが付くセットは、ランチとしてはやや贅沢ながらもその価値は十分に感じられるでしょう。 握りのセットは、八貫、十貫、十三貫といった種類があり、その日の仕入れによって内容が変わるため、訪れるたびに新しい味に出会える楽しみがあります。また、平日お昼限定で提供されるお得な特上丼も数量限定で用意されています。
夜は、旬のネタを織り交ぜたおまかせコースや、鮨の貫数を選べるコースが中心となります。その日一番良い状態のネタを提供することにこだわっており、刺身の盛り合わせや自家製のだし茶碗蒸し、復刻版の玉子焼きといった酒肴も充実しています。 ドリンクメニューも豊富で、日本酒はもちろんのこと、ソムリエが厳選したシャンパンやワインなど、赤酢のシャリとのペアリングを楽しめる銘柄が揃えられています。
座席は、職人の技を間近で見られるカウンター席に加え、テーブル席、そして接待や会食にも最適な完全個室も完備しています。テーブル席は繋げて利用することで大人数での利用も可能になり、半個室のように利用できるスペースもあります。 総席数は情報源により異なりますが、比較的ゆったりとした配置で落ち着いて食事を楽しめる空間です。
アクセスは、東京メトロ銀座線・半蔵門線の三越前駅A1またはA3出口から徒歩約2〜3分と非常に良好です。 また、東京メトロ東西線の日本橋駅からも徒歩圏内です。 歴史と伝統を守りながらも、テイクアウトに対応していたり、乳児や未就学児、小学生といった子供連れでの利用やベビーカーでの入店も可能であったりと、幅広い客層が気軽に立ち寄れる配慮がなされています。オンラインでの予約も受け付けており、多様なシーンで利用しやすい老舗寿司店と言えるでしょう。