大阪市北区天神橋に、かつて「熟成鮨 和」という名の熟成鮨を専門とするお店がありました。天神橋筋商店街から一本東に入った飲食店が集まるエリア、天神橋ベニスビルの2階に位置しており、JR天満駅からは徒歩約3分から5分、大阪メトロ堺筋線 天神橋筋六丁目駅からも徒歩約3分から4分程度でアクセスできる場所にありました。
このお店の大きな特徴は、その名の通り熟成鮨にありました。魚を生で味わう従来の寿司とは異なり、ネタごとに適切な期間と方法で熟成を施すことで、魚本来の旨み成分であるイノシン酸を増加させ、より濃厚で深みのある味わいを引き出していました。店主は鮨だけでなく和食の経験も豊富で、独自の熟成技術を用いて個性的な鮨を提供していました。特に、鮪は豊洲市場の仲卸「やま幸」から仕入れるこだわりの品を使用しており、様々な熟成期間を経た鮪の味わいを堪能できたようです。シャリにもこだわりがあり、赤酢をベースにした独自のブレンドで、熟成ネタの旨みに負けないしっかりとした味わいでした。海苔や調味料、お茶に至るまで厳選されたものを使用し、細部にまでこだわった鮨体験を提供していました。
メニューはコース料理のみでの提供でした。昼と夜で異なる価格帯のコースがあり、価格によって鮨の貫数や肴の種類が変化しました。過去には、昼のコースが5,500円から、夜のコースが8,000円または15,000円から提供されていた時期がありました。コースには熟成鮨の握りだけでなく、季節の肴や巻き物、赤出し、デザートなども含まれており、様々な料理を通して熟成鮨の世界を楽しめる構成となっていました。肴についても、茶碗蒸しや、特定の産地の食材を使用した一品など、こだわりの詰まったものが提供されていたようです。ドリンクは日本酒に特に力を入れており、熟成鮨とのペアリングを楽しめるラインナップでした。
店内は明るく清潔感があり、落ち着いた空間でした。座席は主にカウンター席と、一つだけテーブル席が用意されていました。カウンター席では、職人が目の前で鮨を握る様子を見ながら食事を楽しむことができました。個室はありませんでしたが、貸切での利用も可能でした。お子様連れのお客様にはテーブル席が優先的に案内されることもあったようです。
特別なサービスとしては、誕生日などの際にバースデープレートを用意するなど、お祝い事での利用にも対応していました。また、時期によってはウニを数種類から選ぶことができるといった、特別なサービスが提供されたこともあったようです。
独自の熟成技術と厳選された食材で、多くの食通を魅了した「熟成鮨 和」でしたが、この店舗は2024年1月31日をもって営業を終了しました。短い期間ではありましたが、熟成鮨の可能性を追求したお店として、記憶されています。