福岡市中央区桜坂の閑静な住宅街に佇む「和食 桜坂 拓」は、上質な和食を五感で味わえる隠れ家のような名店です。福岡市地下鉄七隈線の桜坂駅から徒歩およそ4分から5分ほどの場所に位置し、吉田ハウスの1階にひっそりと暖簾を掲げています。スタイリッシュでありながら温もりを感じさせる落ち着いた外観は、訪れる人々を優雅な和の世界へと誘います。
2019年12月にオープンして以来、「和食 桜坂 拓」は瞬く間にその名を広め、地元福岡だけでなく遠方からも食通が訪れる予約困難な人気店として知られています。その魅力は、店主である樋口拓郎氏の確かな腕と、料理への深い探求心にあります。樋口氏は、日本料理店で5年間研鑽を積んだ後、フレンチや洋食の分野でも修行を重ねた経験を持ちます。この和と洋の技術が融合した独自の創作和食が、「和食 桜坂 拓」の料理の根幹を成しています。食材本来の持ち味を最大限に引き出すという信条のもと、一皿一皿に繊細な技と工夫が凝らされています。
店内は、カウンター席4席とテーブル席6席を合わせた全10席のこぢんまりとした空間で、店主の目が隅々まで行き届くよう配慮されています。シンプルながら木の温もりが感じられる内装は、心地よい落ち着きをもたらし、会話を楽しみながらゆったりと食事を堪能できる雰囲気です。器にもこだわりが光り、九州の若手作家による美しい器が料理をさらに彩り豊かに演出しています。この洗練された空間で、樋口氏が客一人ひとりの食事のペースを見極めながら、最適なタイミングで料理を提供してくれるため、きめ細やかなサービスもこの店の魅力の一つです。
「和食 桜坂 拓」で提供されるのは、季節感を大切にしたコース料理が中心です。アラカルトでの提供は基本的にはなく、その時期に最も旬を迎える食材を厳選して使用し、月替わりでコース内容が変化するため、訪れるたびに新たな味覚の発見があります。特にランチタイムには、コストパフォーマンスの高さで評判の「天婦羅御膳」が人気を集めています。この御膳は、彩り豊かな小鉢が重箱に美しく盛り付けられた前菜から始まり、旬の食材を使用した揚げたての天婦羅が目の前で一品ずつ提供されます。カリッと薄衣で揚げられた天婦羅は素材の旨味が際立ち、季節ごとに内容が変わる土鍋で炊き上げたご飯は、その香ばしさと奥深い味わいで多くのリピーターを惹きつけています。過去には、じゃこや菜の花、鯖、安納芋の土鍋ご飯などが提供され、絶品と評されています。味噌汁も出汁の美味しさが際立ち、丁寧に作られていることが感じられます。追加料金でデザートを付けることも可能で、拓式アップルパイや、季節の柑橘とチョコレートを組み合わせたクレープ仕立てのデザートなど、和食の枠にとどまらない洗練された甘味も楽しめます。ランチの価格帯は、2,000円台前半から利用できるコースが設定されており、その内容の充実度から非常に高い満足度を得ています。
ディナーコースは、通常18時に一斉スタートとなる完全予約制で、樋口氏の創作性がより色濃く反映された品々を堪能できます。糸島産の有機野菜や地元の鮮魚など、厳選された旬の食材をふんだんに使用し、例えば長崎五島産の生そうめんや黒毛和牛のザブトンといった工夫を凝らした肉料理などがコースを彩ります。コース料金は、6,000円から7,000円台で提供されており、記念日や特別な日の食事にも選ばれています。ワインリストも和食に合うよう厳選されており、料理とのマリアージュを楽しむことができます。
その人気ゆえ、ランチ・ディナーともに予約は非常に取りづらく、数ヶ月先まで埋まっていることがほとんどです。次回の予約をその場で済ませて帰る客も多く、4ヶ月待ちという声も聞かれます。公式な個室やソファ席の提供は確認できませんが、少人数での利用に適しており、大切な人との記念日など、特別なひとときを過ごす場所として多くの人に選ばれています。
「和食 桜坂 拓」は、繊細な技術と独自の感性で創り上げられた料理、そして温かく丁寧な接客が織りなす空間で、訪れる人々に忘れられない食体験を提供し続けています。