静岡県浜松市中区板屋町に位置するオークラアクトシティホテル浜松の31階にかつて存在した「和食堂 山里」は、2025年1月31日をもってその歴史に幕を下ろしました。浜松駅東口(メイワン口)から動く歩道を利用して徒歩約3分という利便性の高い場所にあり、遠州鉄道の第一通り駅や新浜松駅からも徒歩圏内とアクセスに恵まれた立地でした。
「和食堂 山里」は、一流ホテルの高層階という恵まれたロケーションを最大限に活かし、浜松の街並みや遠く山並みを一望できる絶景とともに、繊細で気品ある日本料理を堪能できる場所として知られていました。ホテルならではの風格と落ち着いた雰囲気が特徴で、特別な日の食事や接待など、様々なシーンで利用されていました。 料理長は1994年のホテル開業当初から腕を振るい、日本料理専門調理師の資格も持つ中間孝氏が務めており、長年にわたり研鑽を重ねた自慢の逸品料理を提供していました。 旬の食材を積極的に取り入れ、見た目にも華やかな会席料理の数々で、訪れる人々の舌を楽しませていたと伝えられています。
提供されていたメニューは、主に会席料理が中心でした。ランチは4,500円から、ディナーは11,000円からという価格帯で、ホテルレストランらしい上質な料理が提供されていました。 中でも、浜名湖産の鰻を使用した「浜名湖うなぎ うな重」は、その土地ならではの味覚として好評を博していました。 また、女性客に人気だったという月替わりの昼の会席コース「花御膳」や、「水無月の宴」「浜名昼膳」といった趣向を凝らしたコース料理も提供され、アボカドなど従来の和食ではあまり用いられなかった食材を取り入れたり、浜名湖産のスズキや浜納豆といった遠州地区の特産品を積極的に使用したりと、地元の恵みを活かした創作料理にも力を入れていました。 和のデザートにも注力しており、和のアフタヌーンティーにも挑戦したいという意欲も示されていました。
店内は総席数102席を有し、多様なニーズに応えられるよう設計されていました。 特に、プライベートな空間を重視するお客様のために、個室が複数用意されていた点が特徴です。洋室が2室(5~8名用と5~12名用)、和室が2室(1室あたり5~10名用で、最大30名まで利用可能)あり、慶事や法要、歓送迎会など、幅広い用途に対応できる環境でした。 個室の利用には5名以上の利用と7,000円以上の会席コースの注文が条件とされていましたが、これにより特別な会食の場が提供されていました。 2015年にはホール席のリニューアルも行われ、中央の仕切りをなくすことで、より多くの席から浜松市街や南アルプスの景色を楽しめるように改善され、奥側には最大36席の半個室スペースも新設されていました。 ホール壁面には西陣織のアートワークが施され、和の雰囲気を一層高める内装も魅力の一つでした。
特別なサービスとしては、記念日で利用するお客様のために、デザートプレートにメッセージを入れるサービスが提供されていました。 これは、来店日の3日前までの事前リクエストが必要で、ホテルならではの細やかな気配りが感じられるサービスでした。 宿泊客のみならず、地域住民にも愛され、浜松の食文化を彩る存在として親しまれていた「和食堂 山里」は、その閉店を惜しむ声も聞かれます。