静岡県熱海市泉大黒崎2702に位置していた「春陽亭」は、かつて熱海・湯河原エリアで長年にわたり親しまれたフランス料理レストランです。JR熱海駅から車で約10分、JR湯河原駅からは車で約7分と、主要駅からは少し離れた場所にありますが、国道135号線沿いにある門柱と看板を目印に坂を上ると、広大な敷地の中に佇む隠れ家のような空間が広がっていました。路線バスを利用する際は「大名が丘」バス停で下車し、東京方面へ徒歩約100mの山側に入口がありました。
1984年の開業以来、「春陽亭」は「クラシックで確かな美味しさの日本の仏蘭西料理」を追求し続け、流行に流されない正統派のフランス料理を提供することで知られていました。2000坪にも及ぶ広大な敷地は花と緑に囲まれ、店内からは相模灘と伊豆の島々を一望できる美しい景観が特徴でした。このリゾート地ならではの閑静な雰囲気の中で、四季折々の自然の表情を楽しみながら、ゆったりと心に残るひとときを過ごすことができました。シェフが予約に合わせて厳選した食材を仕入れ、手間暇かけて作るソースをベースに、お客様一人ひとりのために最良の状態で料理を提供することにこだわっていました。一日30名限定というスタイルも、その品質を維持するためのものでした。
提供されていたメニューは、ランチ・ディナーともに共通のコースが中心でした。主菜一皿のコースは5,940円から用意され、シェフおまかせフルコースは13,750円で提供されていました。魚介のコースでは、白ワインと野菜で柔らかく蒸し煮したアワビのマデラソース添えや、オマール海老のアメリカンソース煮などが人気で、肉のコースでは和牛フィレ肉のポワレや和牛サーロインステーキなど、旬の厳選素材を活かした料理が並んでいました。
「春陽亭」の食後のお楽しみとして特に好評だったのが、ワゴンで提供されるデザートサービスでした。12種類以上もの自家製デザートの中から、お好みのものを自由に選んで楽しむことができ(コースによっては品数に制限あり)、タルトやティラミス、ブリュレなどが人気を集めていました。レストランの庭内に併設されていたパティスリー工房「ペシュ」では、これらのタルトなどのスイーツが販売されており、お土産としても親しまれていました。
店内には個室も完備されており、大切な記念日や誕生日、長寿のお祝いといった特別な日の会食にも多く利用されていました。温かく行き届いたサービスは多くのリピーターを惹きつけ、お客様の思い出に残る食事のひとときを演出していました。天候の良い日にはテラス席でのペット同伴も可能で、自然豊かな環境で愛犬とともに食事を楽しむことができました。また、車椅子での入店も同行者の介助があれば可能であり、乳幼児の入店も事前に相談することで対応していました。店内には3口の電源コンセントが設置されていましたが、Wi-Fiの提供はありませんでした。支払いにはVISA、DC、JCB、Master、AMEX、Dinersといった各種クレジットカードに加え、PayPayも利用でき、無料駐車場が8台分完備されていました。
このように、長年にわたり伊豆の美しい自然の中で本格的なフランス料理と特別な時間を提供し続けてきた「春陽亭」ですが、残念ながら2024年5月中旬をもって営業を終了いたしました。