愛知県名古屋市東区泉1丁目14-23 イトーピア久屋マンション3Fにかつて店を構えていた「純喫茶ライオン」は、長年にわたり名古屋の喫茶文化を支えてきた老舗として知られていましたが、2025年2月9日をもってその歴史に幕を下ろしました。栄で昭和33年(1958年)に創業し、約60年以上の長きにわたり地域の人々に愛され続けた後、2019年6月に久屋大通エリアのこの場所へ移転リニューアルオープンしていました。
名古屋市営地下鉄名城線・桜通線「久屋大通駅」から徒歩数分の立地で、ビルの3階という隠れ家的な雰囲気が特徴でした。店内には、かつての栄の店舗から引き継がれたアンティークの調度品が配されており、大きな振り子時計やシャンデリア、浮世絵、そして店名にもあるライオンの置物などが、新しさの中にレトロな懐かしさを醸し出す空間を演出していました。窓からは久屋大通公園の緑が望め、明るく開放的ながらも純喫茶らしい落ち着いた時間が流れる場所として親しまれていました。
提供されていたメニューは、長年の歴史の中で培われた伝統的な品々が中心でした。中でも多くの人に愛された看板メニューは「自家製プリン」でした。初代オーナーの時代から続くレシピで復刻されたこのプリンは、固めのしっかりとした食感と、卵の優しい素朴な味わいが特徴で、ほろ苦いカラメルとチェリー、ホイップクリームが添えられ、そのレトロな見た目も相まって多くのファンを魅了しました。価格は、過去の情報では500円から700円程度で提供されていました。
また、「エッグトースト」や「エッグサンド」も人気の高い軽食でした。オーダーを受けてから丁寧に手作りされるふわふわの厚焼き玉子が、厚切りのトーストに挟まれ、塩のみで調味されたシンプルな味わいながらも、そのボリューム感と優しい口当たりが好評でした。ランチタイムには、エッグサンドやエッグトーストにコーヒーがセットになったメニューも提供されており、950円程度で楽しむことができました。コーヒーは、名古屋の老舗珈琲問屋「ミスズコーヒー」の豆を使用し、ネルドリップで丁寧に淹れられた深煎りでコクのあるブレンドが特徴でした。店名の「ライオン」が印字されたカップで提供され、細部にまでこだわりが感じられました。
喫茶店の定番である「クリームソーダ」も親しまれ、赤、黄色、緑の3色に加え、希望に応じて青色の提供も行われていました。爽やかなソーダとアイスクリームの組み合わせは、見た目にも楽しく、ノスタルジーを感じさせる一品でした。その他にもオグラトーストやピーチメルバといった喫茶メニューが揃い、訪れる人々に多彩な選択肢を提供していました。
座席は、広さ自体はコンパクトながらも、カウンター席と2人掛け、4人掛けのテーブル席が配置され、ソファ席も設けられていました。特に窓際の席は、久屋大通公園の景色を眺めながらゆったりと過ごせる特等席として人気がありました。店内は完全禁煙で、落ち着いた環境で喫茶体験を楽しむことができました。
特別なサービスとしては、店舗のロゴがデザインされたオリジナルグッズ(バッジ、メモ帳など)や、コーヒー豆を使用したラスクが販売されており、喫茶店ファンにとって嬉しいお土産となっていました。また、ドリンクにはクッキーが添えられることもあり、細やかな心遣いが感じられるお店でした。
「純喫茶ライオン」は閉店しましたが、その歴史と提供された数々のメニュー、そして多くの人々に愛された雰囲気は、名古屋の喫茶文化の中で記憶され続ける存在です。