かつて東京都千代田区永田町の赤坂東急プラザ2階に位置していた「陳麻婆豆腐 赤坂東急プラザ店」は、2023年10月27日(金)に、赤坂東急プラザの全館建て替え工事に伴い惜しまれつつも閉店しました。約22年間にわたり、多くの客に本場四川の味を提供し続けた名店でした。
この店舗は、東京メトロ丸ノ内線および半蔵門線の赤坂見附駅から徒歩わずか1分(約66m~68m)という、非常にアクセスしやすい立地でした。商業施設内にありながらも落ち着いた雰囲気で、都内にある「陳麻婆豆腐」の店舗の中でも特に高級感が漂い、贅沢な食体験ができると評されていました。
「陳麻婆豆腐」は、1862年に四川省成都市で創業した「陳興盛飯舗」で考案された麻婆豆腐の味を忠実に再現することを使命としていました。日本における「陳麻婆豆腐」は、本場の味に惚れ込んだ先代が何度も四川省成都の総本店に赴き、2000年に世界で唯一その看板での営業を許されたブランドの一つとして知られています。唐辛子の辣(ラー)と四川山椒の麻(マー)が効いた、まさに本場の味わいを提供していました。
メニューの中心はもちろん「陳麻婆豆腐」で、その特徴は、煮崩れしにくい木綿豆腐を使用し、挽肉には牛挽肉、そして日本のネギではなく葉にんにくが使われている点にありました。辛さの中にも深い旨味とコクが感じられ、卓上に用意された花椒ミルで好みに合わせて痺れを追加することも可能でした。ランチタイムには、この看板メニューである陳麻婆豆腐に、ライス(お替り自由)、スープ、ザーサイ、杏仁豆腐がセットになったお得なセットが提供されており、1,100円前後で楽しむことができました。ランチの平均予算は2,000円程度、ディナーは2,000円から5,000円程度でした。
グランドメニューには、陳麻婆豆腐の他にも、「唐氏の豚肉角煮」や「五目おこげ」、「フカヒレおこげ」、「四川風フカヒレ姿煮」といった高級中華料理が並び、四川料理の代表格である「酸菜魚」や「水煮魚」、「水煮牛肉」なども提供されていました。また、「本場四川省の回鍋肉」や「本場四川省のエビチリ」といった馴染み深い料理も、本格的な味で楽しむことができました。
座席は66席あり、接待や会食にも利用できる個室も完備されていました。個室は2人用、4人用、6人用、7人用以上と様々な人数に対応しており、ビジネスシーンからプライベートな利用まで幅広く対応していました。以前は地下1階で営業していましたが、2009年の2階への移転を機に個室を設けるなど、より利用しやすい環境が整えられました。店内は禁煙で、Wi-Fiの利用も可能でした。
特別なサービスとしては、キャッシュレス決済に対応しており、VISA、Mastercard、Amex、Diners、JCBなどの主要なクレジットカードに加え、Suica、manaca、ICOCAなどの各種ICカード、PayPayも利用可能でした。お子様連れの入店も歓迎され、外国語(中国語)に対応できるスタッフも在籍していました。過去には、期間限定で「ホルモン陳麻婆豆腐」や「ゴーゴーカレー」とのコラボメニューが提供されたり、「地獄の麻婆豆腐」挑戦時には免責事項への署名が必要となるなど、ユニークな取り組みも行われていました。また、「中華一番!」シリーズのイラストパネル設置など、ファンを楽しませる企画も実施されていました。
「陳麻婆豆腐 赤坂東急プラザ店」は、その利便性の高い立地と、150年以上の歴史を持つ本場の四川麻婆豆腐を日本で忠実に再現した味わいで、多くの人々に愛されたレストランでした。その閉店は、長年にわたり培われた味と空間を惜しむ声と共に記憶されています。